歩む道の先には 最終章


 小雨の降る暗い獣道に、いくつかの足音が交差する
 夜更けの雨は、追われる者の体力と移動速度を容赦なく奪っていた
 こうなる事はわかっていた
だが、こんなにも訪れるのが早いとは思っていなかった




白のウテナ:・・・え?
 ウテナだけが状況を把握できずに、クロノとハイを互いに見やる
乃卯香:ハイ、それは流石に唐突過ぎるんじゃ・・・
ク口ノ:・・・いつから気付いたんだ?
 クロノは特に驚いた様子もなく、半ば予想通りといった反応を見せた
アルプス・ハイ:お前が新しい武器の材料集めに奔走しだしてから、しばらくだ
アルプス・ハイ:その腕じゃ普通の武器は使えないだろうから、
お前の世界の技術を取り込んだ武器を探そうとする理屈はわかる
アルプス・ハイ:その技術を元に異世界で使われてる武器を造ることも・・・まぁ、いずれ誰かが開発したことだろう

 クロノのかつては腕があった場所、そこには彼の新しい武器があった
 どことなくハイの愛用していた槍に似ている。
 ・・・が、中折れ式になっており、その隙間から覗く銃身や撃鉄が、その武器が単なる槍でない事を示していた
アルプス・ハイ:だがな・・・お前が乃卯香に頼んだアレは駄目だ。
乃卯香:まぁ・・・実際に作っちゃったあたしが一番問題なんだけどね・・・

ク口ノ:何も知らなければ・・・そんな気はなかった
 クロノが搾り出すように呟く
アルプス・ハイ:おそらく・・・お前、知ってるんだろ?『バグ』の原因と解決方法・・・だからンなモンこしらえたんだろ?
ク口ノ:ああ
 意外とあっさり認めた
アルプス・ハイ:あいつらが言う『バグ』の原因とやらは確実に俺達だ。
だが、その双方に最も関わっているお前はここにいたら危ない

白のウテナ:・・・もしかして
 ウテナが赤子を強く抱きしめる
 その拍子にウテナの帽子がずれ落ち、そこに光を放ち浮かぶ輪が明らかになった
乃卯香:あたしがクロノのガンランスに取り付けた『竜撃砲 拡散型Lv5』と
アルプス・ハイ:お前ら二人・・・ドミニオンとタイタニアの間に生まれた、その子だ




白のウテナ:っっ!?
 ウテナの翼を『エナジースピア』が貫き、そのまま地面へ墜落した。
 腕に抱えた命を決して離そうとしなかった為か、大きなダメージを負ってしまった様だ
 クロノは足を止め、武器を構える。

カシコス:手間をかけさせないで下さい
ク口ノ:・・・うるせぇよ・・・

 じゃきっ

カシコス:貴方達は禁を犯した。その為この地にバグが発生した
カシコス:可哀想だとは思いますが、貴方達を『抹消』しなくてはなりません

ク口ノ:大人しく抹消されてたまるか!

だうっ!

 銃撃、と言うよりは砲撃に近い一撃が、カシコスを襲う!
 砲撃は人影を一撃で灰と化した

 ・・・が

カシコス:問答無用の砲撃はいかがかと
ク口ノ:やはり・・・『ドッペルゲンガー』か何かか
カシコス:正解です。まぁ・・・私の場合『インテレクトライズ』で知識を付与する事により、
本当の意味での「分身」を作り上げているわけですが・・・

ク口ノ:そこかっ!
 姿を現すか現さないかのほんの一瞬で目標を見定め、クロノは第二撃を放つ
カシコス:流石ですね。貴方の『イーグルアイ』もすばらしいレベルです
 しかし、その声には明らかに嘲笑の色が混じっていた
 獲物を前に、舌なめずりする捕獲者のような・・・
カシコス:ですが、残念ですね。私の姿は貴方の目には見えません
ク口ノ:ほう・・・そうか

じゃき

カシコス:・・・え?
ク口ノ:そのままくたばれ、三流

 竜撃砲が火を吹き、声の主を吹き飛ばした


ク口ノ:学者様が計算負けしてどうするよ・・・大方『インビシブル』でも使ってたんだろうが、
俺が探していたのは2対のドッペルの位置だ

 魔法にも有効射程範囲はある。
ク口ノ:影に隠れて攻撃するような奴なら射程ぎりぎりに出すだろうと踏んで、逆算してぶっ放した、それだけだ
 クロノが振り返ると、そこには・・・
 ゆっくりと地に伏せる、ウテナの姿があった

ク口ノ:・・・・・・?

 一瞬、何が起こったのかはわからなかった

 ウテナが倒れた音を聞いて、ようやく理解した
 3体目がいたのだ。カシコスの放った『ドッペルゲンガー』の
 だが、そのドッペルゲンガーは徐々にその形を崩しつつある。
 術者が行き耐えた今、魔力を供給する術の無い為であろうか

 クロノのガンランスは竜撃砲や酷使した為か放熱板が開いており、銃撃を行おうにも銃弾先刻使い切っている
 我に返り、リロードするよりも早く、ドッペルゲンガーは行動を起こしていた
 かざした両手に魔力が集まり、ドッペルゲンガーの崩壊が速度を増す

 崩れかけたドッペルゲンガーが最後に放った『ルミナリィノヴァ』は、クロノやウテナを巻き込み、一面を焼き尽くした


乃卯香:(ハイ!駄目だよ!
 今にも物陰から飛び出していきそうなハイを、乃卯香が押しとどめる
アルプス・ハイ:(でもよ!
乃卯香:(二人の決意を無駄にする気なの!?
アルプス・ハイ:(・・・っ・・・
二人の子を抱きかかえたまま、ハイは歯軋りした




 クロノがハイに最後に頼んだ事とは、ウテナと子供の事であった
 そして、乃卯香もある程度予見していたのかもしれない


 乃卯香が薬品の調合中に偶然開発した、一人では生きていくには生命力が弱すぎる生物に対して、
 使用者の力を分け与え、数分間ほどだが『共存』と言う形で、その生物を生き永らえさせる技術

 さらには各種ポーションを高密度で精製した秘薬『ゴーレムゴブレット』を併せることにより、魔力にて擬似的な命を生み出す技術

 これらの併用により造り上げた子供の身代わりを、クロノは受け取った


 当初はクロノが一人で囮になるつもりであったのだろう
 だが、ウテナが断固これを拒んだ

白のウテナ:ごめんなさい、お母さんのわがままを許して・・・
 赤子を乃卯香にあずけ、ウテナはまだ言葉もよく理解していない赤子に語りかけた
白のウテナ:貴方は私がいると危険な目に合うかもしれない
白のウテナ:そして、この人は私がいないと危険な目に合うかもしれない

 確かに、そうかもしれない
 クロノ一人を送り出すと、確実に無茶をする。10%の生き残る道を0%にしかねない
 また、クロノが囮になってもウテナが狙われない保障はない・・・と言うより、そんなことは限りなく低い確率だと思われる
白のウテナ:でも・・・また貴方に会うことが出来たら・・・その時は・・・
 ウテナの指が赤子の頬をなでる
白のウテナ:もう一度、抱っこさせてね?
 頬に触れたウテナの指を握り締めて、その子は無邪気に微笑んだ




 その願いも、もはや叶わない
 だからこそ、残された二人にはやるべき事があった

乃卯香:この子は・・・もう、ウナちゃんとクロちゃんだけの子供じゃないんだから
アルプス・ハイ:そうだな・・・うん

アルプス・ハイ:この子は、俺達4人の子だ


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