歩む道の先には 〜そして伝説へ・・・〜
―それから、長い年月が過ぎ・・・彼らは別々に伝説として名を残した
都市の発展に尽力した冒険者は、冒険者の憧れとして語られ
恐怖と災厄を振りまいた魔人は、子供のいたずらに対する戒めとして伝えられ
禁断の恋に生きた堕ちた聖人は、恋愛の象徴として色恋話に花を添え
マリオネストギルドの創始者は、少数部族を救った英雄として崇められていた
だが
彼らが同じリングに所属していた事を知る者は少ない
その真相や、彼らが何を考え、何を感じたのか・・・今となっては、誰にも―
???:ハイじーちゃーん!
アルプス・ハイ:うおっとぅ!?
突如まどろみからたたき起こされ、ハイは声の主に向かい振り返った
アルプス・ハイ:美しき思い出に浸っていたところに何するんじゃこの馬鹿娘!
それにワシはまだじーちゃんじゃないわい!
???:いや・・・なんかねぇ、もうしゃべり方からじーちゃんなんだけど
そこで、思い出したようにその少女はハイに詰め寄る
???:・・・っと、それよりじーちゃん!約束、覚えてるよね!
アルプス・ハイ:・・・はて、何のことかのぅ?年のせいかさっぱり・・・
???:こーいうときだけボケたフリはいーから!16歳になったらアタシも冒険者になるって話よ!
ハイはしばしの間渋るフリをしていたが・・・もう既に胸のうちは決まっていた
アルプス・ハイ:わかっとるわぃ・・・ただ、お前はまだ初心者なんじゃから、
夕飯までには時空の鍵で戻ってくるんじゃぞ?
???:やたっ!じーちゃんさんくすっ!んじゃいてきまーす!
もう既に準備はしておいたのであろう、たんすからリュックを取り出すと、弾丸のような勢いで出て行った
それから数秒もたたないうちに、再び扉が開く
乃卯香:あの子の誕生日だから来てみたら・・・相変わらず騒がしいね
アルプス・ハイ:おお、ばーさ・・・
びすっ
アルプス・ハイ:お前・・・ベアチョップはやめろっちゅーに・・・
乃卯香:ところで、何でお父さんって呼ばせないの?
わざわざあの子の前だけそんな年寄り臭い喋り方までして
相変わらずハイの言葉は無視しながらも、
口にポーションを突っ込ませつつファーストエイドで治療しながら、乃卯香は問いかけた
アルプス・ハイ:いやー・・・やっぱさ、確かにあいつは俺ら4人の子であるけど、
両親はやっぱりクロノとウテナだと思うんだ。だから俺は親父じゃなくてもいいかな、と
乃卯香:しかし、何もじーちゃんは無いでしょうに・・・
アルプス・ハイ:まぁ、あいつが元気ならそれでいいんだ
乃卯香:そうね・・・あれから管理局のほうはその件について何の音沙汰もないし
二人はそのことを密かに心配していたのだが・・・見た目はエミル族と変わらない為か、
身代わりの存在もばれてはおらず、そういった事は一切無かった
まぁ、それ以外にも乃卯香が色々とやっていたのは知っていたが・・・
裏工作だけではどうしようもない部分もある事くらいはハイにも察しがついている。現に「バグ」は発生していたのだから
だが、ハイはあの二人が最後に残した願いが叶ったのだろうと解釈していた
アルプス・ハイ:あの子は・・・ただちょっと人のいうことを聞かずに暴走したり、時々体が光ったり、
感情が高ぶると異様に強大な魔力を放ったりする以外は普通の女の子だからな
乃卯香:そっか、それなら安心だね
アルプス・ハイ:ああ
窓から見える空は、雲ひとつ無い晴天だった
アルプス・ハイ:がんばってこいよ・・・ここからは、お前の物語だ
END…