歩む道の先には 中編


乃卯香:ひゃうっ!?
アルプス・ハイ:乃卯香っ!

 ざしゅっ!

 天井から伸びているプルルを、ハイの槍が貫いた!
アルプス・ハイ:早く憑けっ!
乃卯香:う、うん
 乃卯香はプルルの追撃を振り切ると、素早くハイの背後に回った
 目を閉じて、大きく息を吸い、吐く
 奇妙な脱力感と共に乃卯香の体は風に溶け、ハイの胸元へと吸い込まれるように消えた

 目標を失ったプルル達は、次なる目標を見据え、襲い掛かる
 ハイは槍の持ち手を順手から両手鈍器を握るように持ち変えると、そのまま槍を大きく振りかぶって・・・!
アルプス・ハイ:吹っ飛べやオラアーッ!!
 『ディミソリースピア』の強烈なスウィングでプルルを纏めて吹き飛ばす
アルプス・ハイ:クロノ!浄化しちまえ!
 ハイは掛け声と共に後ろに飛びずさった
 腰溜めに銃を構えたクロノの右手に銀弾を介して霊力が宿る
ク口ノ:くらいやがれ!『散弾』ーっ!!
 プルル達に大量の弾丸が浴びせられる
 大量のプルルが千切れ飛び、あるいは四散したが・・・
 何事も無かったようにうぞうぞと蠢き、ひとつに戻ろうと互いに合体を繰り返していく
ク口ノ:・・・限が無いな・・・
乃卯香:プルルには銀弾じゃ駄目だよ、焼き払うとかじゃないと・・・
アルプス・ハイ:うおちょ!急に出ると危ないぞ!
 ハイの胸元からにゅっと伸びた乃卯香が、背中のリュックから何かを取り出し、ハイとクロノに手渡した
乃卯香:ハイちゃん、これ敵の方にばら撒いて!クロちゃんは今からあたしが投げた物をこの銃弾で撃って!
アルプス・ハイ:・・・お?おお・・・よくわからんがわかった!!
 ハイは預った袋の紐を解くと、プルルたちに向かって投げつける
 すかさず乃卯香も懐から取り出した石を放り投げた
乃卯香:クロちゃん、GO!
ク口ノ:喰らえっ!
 かきんっ、と乾いた音が響くや否や

っどどどどどどど!

 爆音が洞窟内を揺るがした


 クロノとウテナの重大発表(?)から、はや数週間・・・結局ウテナを除く3人で件の洞窟に調査に来ていた
 他の調査団も数PT参加している、と言うことはリング管理局から聞いているから、いざとなれば共闘すればいいだろう


アルプス・ハイ:ところで、今さっきのは何だ?プルルがエラいことになってるけど
 ハイの言うとおり、プルルがエラいことになっている
 乃卯香の放った技の影響なのか、大量のプルルの水分をあらかた奪い取り、各色ゼリコに凝縮させてしまっていた
 乃卯香はせっせとそれらを拾い集めているが、何に使うのかはあえて聞くまい
乃卯香:あれはねー『ダストエクスプロージョン』用の触媒にカラカラパウダーを混ぜ込んで
相手を強制的に乾燥させる爆発を引き起こす、対プルル用に改良しといた乃卯香特製『強乾パウダー』だよ

 確かに普通の『ダストエクスプロージョン』だと、洞窟内では落盤の危険もあるし、
 爆発の威力を抑えて妙な効力を付与した乃卯香の策は良策だったと言えよう
乃卯香:ちなみに着火に使ったのは『炎の召喚石』ね
アルプス・ハイ:しかし・・・毎度毎度ながら、チート級のモン開発するよな?お前・・・
ク口ノ:毎度毎度俺たちはそれに助けられているわけだが
乃卯香:そうそう、ハイちゃん文句ばっか言わないー
アルプス・ハイ:文句じゃねえよ、お前には十分感謝してるさ・・・おかげで道も開けたしな
 先程までは無尽蔵に沸いていたプルルも、さっき爆発の余波がかなり広範囲に広がっていったのか、まったく姿を現さない
 ハイが槍で指し示した先からは、暗い道が開けていた
アルプス・ハイ:落ち着いたら行くぞ、立てるか?
乃卯香:ん
 乃卯香が差し出した手をハイが引っ張り上げ、立ち上がらせる
アルプス・ハイ:クロノは大丈夫か?
ク口ノ:ん
アルプス・ハイ:・・・なにやってんだ?おkならいくぞ?
ク口ノ:・・・・・・
 クロノは腕を差し出し続けていたが、二人がさっさと進み始めた為、無言で立ち上がり砂をはらう
ク口ノ:(・・・やっぱ、ウテナも来てくれた方がよかったか・・・)
 取り出したツーショットのSSを見て何とかやる気を出し、小走りで二人の後を追った


 慎重に歩を進めるものの、それから数分もたたないうちに、少し明るく広い場所に行き着いた
乃卯香:なにこれ?この部屋全体的に光ってる・・・?
アルプス・ハイ:光るというか、外のような自然な明るさだな・・・この場合は不自然だが
ク口ノ:・・・お?他の団体さんも着たようだ
 時間を置いて潜入したPTや、他に見つかった入り口から突入したと思われるPTも続々と広場に集まってくる
 どうやら、ここがこの洞窟の中央もしくは最奥らしい
 そして、部屋の中央には何かがいた

 見た目には、大きい蜘蛛に見えた
 ただし、タランチュラや大蜘蛛はおろか、アクロニアの地下遺跡で見た鬼蜘蛛や般若雲よりもはるかに大きいサイズ
 そして何より、この場にいた全冒険者たちが感じた『未だかつて無い危機感』が、ただのモンスターではない事を示していた

ずるり

 おおよそ蜘蛛が動くときとは異なる音をたて、そいつが動く

ク口ノ:下がれっ!!
 言われるまでもなく、ばっと後ろに飛びずさる

うじゅるるるっ!!

 いきなり蜘蛛の体から、無数の触手が伸びてきた
 それも、言葉通り全身から
 逃げ遅れた冒険者らが絡めとられ、じわじわと引きずられていく

アルプス・ハイ:おいィ?この誤字セイ職種ものは著とsYレならんしょこれは・・?
発フィもあまり調子に乗ってると裏世界でひっそり幕を閉じることになる

乃卯香:いいから構えて!・・・って、クロちゃん!
ク口ノ:っ!!
 怒号と剣戟の飛び交う中、ほんの一瞬の隙をつきクロノは利き腕を触手に絡めとられた
 とっさに乃卯香がその触手を斧で叩き割るが、逆に斧の方が削られている
 削られている、と言うよりも・・・当てた箇所の武器が腐食されたのか、消失してしまっている。
 攻撃の当たった部分にダメージはあるようだが、何せ触手の数が多すぎる
 数回にわたる乃卯香の『ブロウ』により、クロノはようやく触手から開放されたが・・・

絡めとられていた箇所、腕の付け根から先がなくなっていた

 ハイの感じていた危険信号が確信に変わった
 逃げろ、と

アルプス・ハイ:近接攻撃はするな!魔法や遠距離スキルで攻撃しつつ、全員引け!
余裕のある奴は他のメンバーや負傷者を憑依させろ!

 その声に異論を唱えるものもいるはずがなく、全員この場から後退するしかなかった

続く・・・

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